不動産の販売や賃貸募集において、物件の魅力を伝えるために写真や動画を活用することは重要です。
近年では、ドローンを使って建物の外観や敷地全体、周辺環境などを上空から撮影するケースも増えています。
地上からの撮影では伝わりにくい建物の形状や土地の広さ、周囲の道路や施設との位置関係などを映像で伝えられるため、不動産広告における新しい撮影方法として注目されています。
しかし、不動産の物件撮影でドローンを使用する場合、自由に飛ばせるわけではありません。
撮影する場所や時間帯、飛行方法によっては、航空法に基づく許可・承認が必要になります。また、土地や建物の管理者への確認、近隣住民への配慮なども欠かせません。
この記事では、不動産の物件撮影でドローンを使用する際に必要となる手続きや許可、注意点について、初心者にもわかりやすく解説します。
1.不動産の物件撮影でドローンを使用するメリット
ドローンを活用すると、通常のカメラでは撮影が難しい角度から物件を撮影できます。
主なメリットは次のとおりです。
① 建物の外観を上空から撮影できる
戸建て住宅やマンション、アパートなどの建物を上空から撮影することで、建物全体の形状や屋根の状態などを映像で伝えられます。
特に、敷地が広い物件や特徴的な外観を持つ建物では、ドローンによる撮影が効果的です。
② 土地の広さや形状を伝えやすい
土地や分譲地の販売では、敷地全体の広さや形状、周辺道路との位置関係を伝えることが重要です。
ドローンで上空から撮影することで、土地の全体像を把握しやすくなります。
③ 周辺環境を映像で紹介できる
物件そのものだけでなく、周辺の住宅地や道路、公園などを撮影することで、購入希望者に周辺環境を紹介できます。
例えば、次のような場面で活用できます。
- 新築戸建て住宅の販売用動画
- 中古住宅の販売用写真
- 分譲地や売地の紹介
- マンションやアパートの外観撮影
- 別荘やリゾート物件の紹介
- 不動産会社のホームページやSNS用動画
このように、ドローンは不動産物件の魅力を伝えるための有効な撮影手段となります。
2.不動産の物件撮影でドローンの飛行許可が必要になるケース
不動産の物件撮影では、撮影場所や飛行方法によって航空法上の飛行許可・承認が必要になる場合があります。
特に注意したいのが、次のケースです。
① 人口集中地区(DID)で撮影する場合
住宅地や市街地で不動産物件を撮影する場合、人口集中地区(DID)に該当する可能性があります。
人口集中地区とは、国勢調査の結果に基づいて設定される人口密度の高い地域のことです。
例えば、次のような場所で撮影する場合は注意が必要です。
- 駅周辺の住宅地
- 市街地にある戸建て住宅
- マンションやアパートが密集する地域
- 住宅が多い分譲地
人口集中地区の上空で100g以上のドローンを飛行させる場合、原則として国土交通大臣の許可が必要です。
ただし、機体認証や操縦者技能証明などの条件を満たし、所定の安全措置を講じる場合には、許可・承認が不要となる例外もあります。
撮影予定地が人口集中地区に該当するか、事前に確認しておきましょう。
② 建物や人から30m未満の距離で撮影する場合
不動産の物件撮影では、建物の外観や屋根などを近い距離から撮影することがあります。
しかし、航空法では、原則として第三者や第三者の物件との間に30m以上の距離を確保する必要があります。
例えば、次のような撮影では注意が必要です。
- 隣接する住宅の近くを飛行する
- 建物の外壁を近距離から撮影する
- 隣の敷地にある建物の近くを飛行する
- 第三者の車両の近くを飛行する
第三者や第三者の物件との距離が30m未満となる場合、原則として国土交通大臣の承認が必要です。
なお、撮影対象となる建物であっても、所有者や管理者の関係だけで航空法上の第三者物件に該当しないと判断できるわけではありません。実際の飛行方法や関係者の状況を踏まえて確認する必要があります。
③ 夜間に撮影する場合
夕暮れや夜景を撮影するために、日没後にドローンを飛行させる場合は、夜間飛行に該当します。
航空法では、原則として日中(日出から日没まで)に飛行させる必要があります。
そのため、夜間に飛行させる場合は、原則として国土交通大臣の承認が必要です。
例えば、次のような撮影が該当します。
- 夕方から夜にかけての住宅外観撮影
- 夜景が見えるマンションの紹介動画
- ライトアップされた建物の撮影
- 夜間のリゾート施設の撮影
なお、日没前後の撮影であっても、実際の飛行時間が日没後に及ぶ場合は夜間飛行として扱われます。
④ ドローンを目視できない状態で撮影する場合
ドローンを操縦者が直接目で確認できない状態で飛行させることを、目視外飛行といいます。
例えば、次のような撮影が考えられます。
- 建物の裏側に回り込んで撮影する
- 建物の陰に入った状態で撮影する
- モニターの映像だけを確認して操縦する
このような飛行は、目視外飛行に該当する可能性があります。
目視外飛行を行う場合は、原則として国土交通大臣の承認が必要です。
3.不動産の物件撮影で必要となる主な手続き
ドローンを使って不動産物件を撮影する場合、主に次の手続きを確認する必要があります。
① ドローンの機体登録
100g以上のドローンを屋外で飛行させる場合、原則として機体登録が必要です。
登録したドローンには登録記号を表示し、原則としてリモートID機能を備える必要があります。
機体登録を行わずに飛行させることはできません。
なお、100g未満の機体は航空法上の無人航空機の登録制度の対象外ですが、その他の法令や飛行ルールがすべて適用されないという意味ではありません。
② 飛行許可・承認申請
人口集中地区での飛行や夜間飛行、目視外飛行、第三者や第三者の物件から30m未満での飛行などを行う場合は、原則として飛行許可・承認が必要です。
申請は、国土交通省の「ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)」を利用して行います。
申請にあたっては、主に次の情報を準備します。
- 使用するドローンの機体情報
- 操縦者の情報
- 飛行させる日時や期間
- 飛行させる場所や方法
- 飛行の目的
- 安全確保のための措置
申請内容によって必要な情報や添付資料は異なります。
また、一定の条件を満たす場合には許可・承認が不要となる制度もあるため、実際の飛行条件に応じた判断が重要です。
③ 飛行計画の通報
ドローンを飛行させる際には、原則として事前に飛行計画を通報する必要があります。
飛行計画には、飛行する日時や場所、経路などを登録します。
他のドローンとの飛行経路の重複を確認し、安全に飛行できるようにするための手続きです。
④ 土地・建物の所有者や管理者への確認
航空法上の許可・承認を取得していても、土地や建物を自由に使用できるわけではありません。
例えば、次のような場合には事前に確認しておくことが大切です。
- 物件の敷地内からドローンを離着陸させる
- 建物の敷地内に機材やスタッフを配置する
- 管理会社が管理するマンションの敷地で撮影する
- 商業施設や駐車場などで撮影する
撮影場所の所有者や管理者に撮影内容を説明し、必要な許可や承諾を得ておきましょう。
4.ドローン撮影で注意したい法律・ルール
不動産の物件撮影では、航空法以外にも注意しなければならないルールがあります。
① プライバシーへの配慮
ドローンは上空から広い範囲を撮影できるため、近隣住宅の室内や住民の様子が映り込んでしまう可能性があります。
特に住宅地で撮影する場合は、近隣住民のプライバシーに配慮することが重要です。
撮影時には、次のような点に注意しましょう。
- 隣家の窓や室内を撮影しない
- 通行人の顔が映り込まないようにする
- 必要以上に周辺住宅を撮影しない
- 公開前に映り込みを確認する
- 必要に応じて画像や動画にぼかしを入れる
不動産広告として写真や動画を公開する場合には、撮影時だけでなく公開時のプライバシーにも配慮する必要があります。
② 道路や周辺施設での撮影
物件の撮影場所によっては、道路や公園、河川敷などを利用することがあります。
このような場所では、航空法上の手続きとは別に、施設管理者への確認や道路使用許可などが必要となる場合があります。
例えば、道路上に撮影機材を設置したり、交通に影響を与える形で撮影を行ったりする場合には、警察署への事前相談が必要になることがあります。
撮影場所ごとに管理者や関係機関を確認しておきましょう。
③ 小型無人機等飛行禁止法への対応
国の重要施設やその周辺では、「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(小型無人機等飛行禁止法)によって、ドローンの飛行が規制されている場合があります。
対象となる施設には、国会議事堂や官公庁、原子力事業所などがあります。
物件の所在地によっては、この法律の対象区域に該当する可能性もあるため、事前の確認が必要です。
④ 飛行禁止空域や条例の確認
空港周辺や緊急用務空域など、飛行が制限されている空域にも注意が必要です。
また、自治体によっては公園などでのドローン飛行を条例や施設管理規則によって制限している場合があります。
国土交通省の許可・承認を取得していても、別の法律や条例による規制を無視して飛行できるわけではありません。
5.不動産の物件撮影を行うまでの流れ
実際にドローンで物件撮影を行う場合は、次のような流れで準備を進めます。
STEP1:撮影する物件と目的を確認する
まず、どの物件を撮影するのか、どのような写真や動画を撮影したいのかを明確にします。
建物の外観なのか、土地全体なのか、周辺環境なのかによって、必要な飛行方法が異なります。
STEP2:飛行場所と飛行方法を確認する
撮影場所が人口集中地区に該当するか、空港周辺などの規制区域に該当しないかを確認します。
また、夜間飛行や目視外飛行、第三者との距離などについても確認します。
STEP3:必要な許可・承認を確認する
飛行条件を整理し、航空法上の許可・承認が必要かを判断します。
必要な場合は、DIPS2.0から申請を行います。
STEP4:土地・建物の管理者などに確認する
撮影場所や離着陸場所について、所有者や管理者に撮影内容を説明し、必要な承諾を得ます。
周辺住民や施設利用者への配慮も忘れないようにしましょう。
STEP5:飛行計画を通報し、安全確認を行う
飛行前に必要な計画通報を行い、当日の天候や周囲の状況、機体の状態などを確認します。
安全が確保できることを確認したうえで撮影を実施します。
6.不動産の物件撮影で行政書士に相談するメリット
ドローンによる物件撮影では、撮影場所や飛行方法によって必要な手続きが異なります。
特に住宅地での撮影では、人口集中地区や第三者との距離、夜間飛行など、複数の規制に該当する可能性があります。
そのため、撮影を始める前に必要な手続きを整理しておくことが大切です。
行政書士に相談することで、例えば次のようなサポートを受けられます。
- 撮影内容に応じた飛行許可・承認の必要性の確認
- 必要な申請手続きの案内
- DIPS2.0を利用した飛行許可・承認申請のサポート
- 申請に必要な情報や書類の整理
- 飛行に関係する法令や手続きの確認
なお、実際の飛行や安全管理、土地・建物の使用承諾などについては、操縦者や撮影事業者、物件の所有者・管理者などがそれぞれ確認・対応する必要があります。
7.まとめ|不動産の物件撮影でドローンを使用する際は事前確認が重要
不動産の物件撮影にドローンを活用すると、建物の外観や土地の広さ、周辺環境などを上空から撮影でき、物件の魅力をより効果的に伝えられます。
一方で、撮影場所や飛行方法によっては、航空法に基づく飛行許可・承認が必要になります。
特に、次のポイントは事前に確認しておきましょう。
- 人口集中地区(DID)に該当するか
- 人や第三者の物件との距離を確保できるか
- 夜間飛行や目視外飛行に該当しないか
- ドローンの機体登録が済んでいるか
- 土地や建物の所有者・管理者の承諾が必要か
- その他の法律や条例による規制がないか
ドローンを安全かつ適法に活用するためには、撮影前の確認と必要な手続きを適切に行うことが大切です。
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