建設業許可を取得している事業者は、毎事業年度終了後に「決算変更届」を提出しなければなりません。
しかし、日々の業務に追われて提出を忘れてしまったり、数年分の届出を放置してしまったりすることもあるかもしれません。
決算変更届は、提出期限を過ぎてしまっても、そのまま放置してよいものではありません。未提出の状態が続くと、建設業許可の更新や経営事項審査など、今後の手続きに影響する可能性があります。
この記事では、決算変更届を出し忘れた場合の罰則やリスク、未提出に気づいたときの対処法について、わかりやすく解説します。
1.そもそも建設業許可の決算変更届とは?
決算変更届とは、建設業許可を取得している事業者が、毎事業年度の終了後に提出する届出です。
一般的には「決算報告」や「事業年度終了届」とも呼ばれています。
建設業許可を取得した事業者は、建設業法第11条第2項に基づき、毎事業年度終了後4か月以内に、許可行政庁へ必要書類を提出する義務があります。
この届出では、1年間の工事実績や会社の財務状況などを報告します。
決算変更届の提出期限
例えば、3月31日が決算日の会社であれば、原則として7月31日までに提出する必要があります。
- 3月31日決算:7月31日まで
- 6月30日決算:10月31日まで
- 9月30日決算:翌年1月31日まで
- 12月31日決算:翌年4月30日まで
※提出期限の具体的な取扱いについては、許可行政庁の案内も確認してください。
決算変更届は、新規許可申請や更新申請のときだけ提出すればよいものではありません。建設業許可を維持している間は、毎年提出する必要があります。
2.決算変更届を出し忘れたらどうなる?
決算変更届を提出し忘れた場合、主に次のようなリスクがあります。
① 建設業法違反となり罰則の対象になる
決算変更届は、建設業法で提出が義務付けられている書類です。
そのため、提出期限を過ぎて未提出の状態が続いている場合、建設業法違反に該当します。
建設業法第50条では、第11条第1項から第4項までに規定する書類を提出しなかった場合の罰則として、次の内容が定められています。
- 6か月以下の拘禁刑
- 100万円以下の罰金
つまり、決算変更届の未提出は、単なる書類の提出忘れでは済まない可能性があります。
ただし、提出期限を1日過ぎただけで直ちに刑事罰が科されるという意味ではありません。実際の対応は違反の状況や行政庁の判断などによります。
② 建設業許可の更新ができなくなる可能性がある
決算変更届を提出していない場合、建設業許可の更新手続きに支障が出る可能性があります。
建設業許可は、原則として5年間の有効期間があり、引き続き許可を維持するためには更新申請が必要です。
しかし、過去の決算変更届が未提出のままでは、更新申請に必要な手続きが整っていないため、行政庁で更新申請を受け付けてもらえない場合があります。
特に注意したいのが、複数年分の決算変更届を提出していないケースです。
例えば、3年間にわたって決算変更届を提出していなかった場合、3期分の書類を整理して提出する必要があります。
更新期限が迫ってから未提出に気づくと、書類の準備が間に合わなくなる可能性もあります。
建設業許可を継続するためにも、毎年忘れずに提出することが重要です。
③ 経営事項審査(経審)を受けられなくなる可能性がある
公共工事の入札に参加している事業者にとって、特に注意したいのが経営事項審査への影響です。
経営事項審査(経審)とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者について、経営状況や技術力などを客観的に評価する制度です。
経審を受ける際には、決算変更届の提出が必要になります。
そのため、決算変更届が未提出の場合、経審の申請手続きに支障が出る可能性があります。
経審を受けられなければ、公共工事の入札参加資格を維持するうえでも問題が生じるおそれがあります。
公共工事を継続的に受注している会社は、決算変更届の提出時期を特に意識しておきましょう。
④ 行政庁から指導や監督処分を受ける可能性がある
決算変更届を提出していない場合、許可行政庁から提出を求められたり、指導を受けたりする可能性があります。
また、未提出の状態が改善されない場合には、建設業法第28条に基づく監督処分の対象となることもあります。
状況によっては、指示処分などの行政処分につながる可能性もあるため、提出を忘れていたことに気づいたら、速やかに対応することが大切です。
なお、届出を忘れたからといって、直ちに建設業許可が取り消されるわけではありません。違反の内容や状況に応じて判断されます。
3.決算変更届を出し忘れていた場合の対処法
では、すでに決算変更届を出し忘れていた場合、どのように対応すればよいのでしょうか。
基本的には、未提出となっている事業年度分の書類を整理し、速やかに提出することが重要です。
① 未提出となっている年度を確認する
まずは、過去の決算変更届の提出状況を確認しましょう。
例えば、次のようなケースです。
- 令和5年度分は提出済み
- 令和6年度分は未提出
- 令和7年度分は未提出
この場合、令和6年度分と令和7年度分の2期分について、決算変更届を準備する必要があります。
過去に提出した控えや行政庁の受付記録なども確認し、どの年度が未提出なのかを正確に把握しましょう。
② 未提出分の必要書類を準備する
次に、それぞれの事業年度に対応する決算変更届の書類を準備します。
主な提出書類は次のとおりです。
- 変更届出書(決算変更届の表紙)
- 工事経歴書
- 直前3年の各事業年度における工事施工金額
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書(法人の場合)
- 注記表(法人の場合)
- 納税証明書
- その他、許可行政庁が求める書類
なお、個人事業主と法人では必要書類が異なります。また、資本金や会社の状況などによって追加書類が必要になる場合もあります。
過去の決算書や工事請負契約書、請求書などを確認しながら、各年度の内容を正確に作成しましょう。
③ 許可行政庁に提出方法を確認する
書類の準備ができたら、許可を受けている行政庁に提出します。
提出先は、建設業許可の区分によって異なります。
- 国土交通大臣許可:管轄の地方整備局等
- 都道府県知事許可:許可を受けている都道府県
複数年分を提出する場合の書類のまとめ方や、遅延理由書などの追加資料が必要かどうかは、行政庁によって取扱いが異なる場合があります。
そのため、提出前に管轄窓口へ確認しておくと安心です。
なお、未提出分は年度ごとに整理して作成することが基本です。複数年度分を一つにまとめてよいとは限らないため、提出方法を確認しましょう。
④ 今後の提出漏れを防ぐ仕組みを作る
未提出分の手続きが終わったら、今後同じことを繰り返さないための対策も必要です。
例えば、次のような方法があります。
- 決算月の翌月に決算変更届の準備を開始する
- 提出期限をカレンダーに登録する
- 税理士と行政書士の間で決算情報を共有する
- 毎年の提出状況を一覧表で管理する
決算変更届は毎年必要になる手続きなので、担当者の記憶だけに頼らず、社内で管理する仕組みを作っておくことが大切です。
4.決算変更届を毎年提出するために必要な書類とは?
決算変更届を提出する際には、主に工事実績と財務状況を確認できる書類が必要になります。
ここでは、代表的な提出書類を紹介します。
工事経歴書
その事業年度に施工した工事の実績を記載する書類です。完成工事だけでなく、記載方法について行政庁の手引きを確認する必要があります。
直前3年の各事業年度における工事施工金額
業種ごとの工事施工金額を記載する書類です。建設業許可を取得している業種について、工事実績を整理します。
貸借対照表
決算日時点での会社の資産・負債・純資産の状況を記載します。
損益計算書
1年間の売上や費用、利益などを記載する書類です。
株主資本等変動計算書・注記表
法人の場合に必要となる財務関係の書類です。
納税証明書
許可行政庁が指定する税目の納税証明書を提出します。知事許可と大臣許可、提出先によって取扱いが異なるため注意しましょう。
必要書類は法人・個人の別や許可行政庁によって異なる場合があります。必ず最新の提出要領を確認してください。
5.決算変更届の提出を行政書士に依頼するメリット
決算変更届は、毎年提出しなければならない手続きですが、必要書類の作成や工事実績の整理には一定の手間がかかります。
特に、複数年分を出し忘れている場合には、過去の決算書や工事資料を確認しながら作成する必要があるため、事業者にとって大きな負担になることがあります。
行政書士に依頼することで、次のようなメリットがあります。
① 必要書類の作成を任せられる
工事経歴書や財務諸表など、決算変更届に必要な書類の作成を依頼できます。
本業である建設工事や現場管理に集中しやすくなります。
② 複数年分の未提出にも対応できる
何年分も提出を忘れていた場合でも、対象年度や必要資料を整理し、提出に向けた準備を進めることができます。
③ 建設業許可の更新も見据えた管理ができる
決算変更届だけでなく、建設業許可の更新や各種変更届など、今後必要となる手続きについても相談できます。
毎年の手続きを専門家に依頼することで、提出漏れの防止にもつながります。
6.まとめ|決算変更届を出し忘れたら早めに対応しましょう
建設業許可の決算変更届は、毎事業年度終了後4か月以内に提出しなければならない重要な届出です。
提出を忘れたまま放置してしまうと、次のような問題が生じる可能性があります。
- 建設業法に基づく罰則の対象となる
- 建設業許可の更新手続きに支障が出る
- 経営事項審査を受けられなくなる可能性がある
- 行政庁から指導や監督処分を受ける可能性がある
もし決算変更届を出し忘れていた場合でも、まずは未提出となっている年度を確認し、必要書類を整理して速やかに提出することが大切です。
「何年分も提出していない」「更新期限が近づいている」「必要書類の作成方法がわからない」といった場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
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